【七月便り】バックナンバー 2010年  中埜有理(なかの ゆり)   

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七月便り


中埜有理(2010.1.7更新)







センチメンタル・ジャーニー

 用事があって、20代のころに住んでいた品川区の大井町へ行きました。区役所の場所をすっかり忘れていたことにびっくり。思い出せば、ここ以外にない、という場所だったんだけどね。

 ついでに、大井町駅のそばの洋食屋ブルドッグに行ってみました。湘南新宿線が通って、駅もずいぶん変わっていたので、もうなくなっているんじゃないかと半信半疑で行ってみたのですが、昔のままで健在でした。

 「大井一うまい・やすい」のブルドッグ。お昼の定食を注文しました。チキンカツがメインで、ガラスの小鉢にカレーがついています。キャベツの千切りがシャキッとしていて、目の前で揚げてくれるチキンカツがとっても美味でした。久々に「揚げ物、おいしい!」と思った一瞬でした。お値段は850円だったので、やすいかどうかは疑問ですが。

 日本橋の三越。子供のころは都電なるものが走っていて、その都電に乗って、家族でよく三越デパートへ行きました。もう何年も行っていませんでしたが、ロビーのクリスマス・ツリーの後ろには、天女の像があいかわらず立っていました。これができたときは話題沸騰で、たしか私も親につれられて見物に行ったような気がします。そういえば、直木賞をとった『鷺と葦』(北村薫)には三越のライオンが出てきます。あとから、そういえばライオン……と思ったのですが、このときは地下鉄で往復したので、ライオンは見損ねました。『鷺と葦』には、ヒントになる言葉として「ライオン」が出てくるのです。

 大学生のときによく行っていた渋谷百軒店のカレー屋さん、ムルギーへ行きました。ここは最近もときどき行っていますが、休みが不定期なので、やっているかどうかが不安なお店です。昔は野菜カレーがあったはずなんだけど。

 昔なじみの場所に行ってみると、記憶のはかなさがよくわかります。大井町は変わっていて驚いた。じつは、用もないのに、以前住んでいたアパートまで見にいったりしたのですが、行き方がわからなくてうろうろしちゃいました。もうないかと思ったけど、ちゃんとあって、昔のままだったのにはかえってびっくりしました。

 若いころの未熟な自分を思うと、思わず赤面しちゃいますね。でも、きっとこの先、いまの自分を思い返すと、同じように赤面ものなんだろうなぁ。
(なかの ゆり)






七月便り


中埜有理(2010.2.3更新)

路上観察――SUTORESUはストレスだ!

 人の行動には間違いがつきもの。文字や文章にミスがあるのは当然ですよね。それをいちいち指摘するのはやぼなことだとわかってます。ほんと。
 でも、これは、どうにもムズムズして、いわずにいられない!
 マッサージ店のガラス窓に書いてあった。

「BODY & SUTORESU CARE」

 STRESSという英語がわからないなら、せめてカタカナにして。
 あるいはBODYやCAREという英語と混ぜないで! こういうの見てると、かえってSUTORESU溜まっちゃうよ。ぷんぷん!  

……と、一度は腹を立てたものの、いや、しかしこのたくましさが日本人のいいところなのかもしれないなーと思い返す。
(なかの ゆり)






七月便り


中埜有理(2010.3.3更新)


路上観察――ちょっとした疑問

 先月はストレスのローマ字表記(SUTORESU)に釈然としないという話でしたが、ストレスとまではいかなくても、ちょっとした疑問を感じてしまうことがあります。まあ、あくまで、「ちょっとした」なんですけどね。

 博多の中州にあるホテル。写真はブレちゃってますが、「リゾートカプセルホテル」と書いてある。
 リゾートとカプセルホテル。いちばんミスマッチな言葉ではないでしょうか? これでいいのか?

 もう一つは、街角の小さな憩いスペースに置かれている彫刻。子供の像です。
 彫刻作品としてみた場合、帽子やマフラーをかぶせるのは、はたしてアリなんでしょうか。浜松町駅の小便小僧のたぐいだと思えば、これでいいんでしょうけど。 

 ……どうでもいいといえばどうでもいいことなんだけど、考えだすと、これでいいのか?……と頭を悩ませてしまう。でも、きっとこれでいいんでしょうね。
(なかの ゆり)




七月便り


中埜有理(2010.4.4更新)

卓上観察――ムーミンとにょろにょろ

 このあいだ面白い体験をしました。「コロコロ・コミック」に連載されていた人気漫画『ゲームセンターあらし』の作者で、現在は小説家でもあり、早稲田eスクールの大学院で教育工学を専攻しているすがやみつるさんが、教育漫画に関する研究の一環として、「漫画を描いたことがない人でも約40分の授業を受ければ誰でも4コマ漫画が描ける」というオンラインの授業を実施したのです。プロの漫画家に教えてもらえる機会なんてめったにないことなので、私もさっそく受けてみたよ!

 4コマ漫画とは何かという簡単な説明のあと、すぐに実作にとりかかる。まず主人公の造形。これは自分をモデルにして、名前は男性なら「○○くん」、女性なら「××ちゃん」にする。それに自分の性格や特徴をあらわす形容詞をつけると、タイトルのできあがり。「あわてぼうのみつるくん」とか「食いしん坊のユリちゃん」という具合。

 さらに、「絵なんてとっても描けないよ」という人のために、丸、四角、三角と単純な図形で顔を描き、喜怒哀楽の表情のつけ方も眉毛や目でシンプルに表現することを教わります。全体像はほぼ2頭身にすると、かわいらしく見えるんだって。

 それに加えて、漫画には独特の記号表現がある。これは「漫符」ともいうそうです。この言葉は初めて知った。あせったときの汗のしずく、額にかかる青ざめ線、何かを思いついたときのパッと光る電球、走るときの足の渦巻きなんかがそれです。

 4コマの起承転結も、とても簡単。自分がその日の朝、したこと、考えたことをまず1コマ目に書きます(文字で書くこの筋書き、セリフ&ト書きを「ネーム」という)。2コマ目にはそれを受けた続きで、話を発展させる。そして、3コマ目には、失敗したことを書きます。4コマ目でオチをつけるのですが、オチが思いつかないときは、「それでも」とか「やっぱり」とか「でも」という接続詞をつけると、かっこうがつくというコツを教えてもらいました。

 どんな筋書きでも、4コマ目に「それでも地球は回っている」とか「やっぱり元気な○○くん」とすれば、なんとなく収まりがつくんですね! なるほどー。そして、4コマ目は前向きで明るい結論にすると読んだ人もハッピーになる、というのが肝心なことです。そこが諷刺漫画やカリカチュアとは違うところ。

 とても楽しい授業だったのですが、やっぱり一番むずかしいのはキャラクターを作ることでした。個性的な、いわゆる「キャラ立ち」した登場人物を作れたら、その作品は成功まちがいなしですね。

 というわけで、写真はムーミンと「にょろにょろ」の形をしたパンです。食べ物になるくらいまでいったら、かなり人気があるキャラクターといえるんじゃないかな。ムーミンは主人公だから、まあ納得にしても、にょろにょろ、こんなに人気があるとはね!
(なかの ゆり)






七月便り


中埜有理(2010.5.6更新)









路上観察――ボールパークにて

 家から徒歩圏内にあってほしいもの。スーパーや本屋さんは当然。できれば、あったらいいなーと思うものに映画館と野球場があります。とくに野球好きというわけじゃないんだけどね、なんとなく、あったらいいな、と。

 その条件にあてはまる……のは那覇での話。那覇まで飛行機か船じゃなければ行かれないというのはさておき……って、そこが大問題じゃん。

 那覇の奥武山公園にあった古い野球場を取り壊して、新しい野球場ができました。沖縄セルラースタジアム那覇。オープニングの巨人・阪神ファーム交流戦に行ってきました。ぶらっと歩いていったら、もう7回の表だったので無料で入れました。来年から巨人がキャンプに来るそうです。

 野球場といったらホットドッグだと思ってお昼を抜いていったのに、ホットドッグは売っていなかった(泣)。でも、ビールは(オリオン)外せません。

 ところで、英語で野球場のことはbaseball fieldといいますね。『フィールド・オブ・ドリームス』なんて映画がありました。フィールドは野球に限らず、スポーツをする野っぱら全般をさします。でも、ボールパークっていう言い方もいいですよね。「野球はプレイだ、楽しまなくちゃ」というほうが、「××軍は永遠です」とかいうより遊び心があっていいんじゃないでしょうか。

 なまで見る野球は、野手の送る白球のスピードとカキーンという球音がとっても気持ちいい。昼ビールでご機嫌ということもあるけどね。
(なかの ゆり)






七月便り


中埜有理(2010.6.3更新)




路上観察――笠間へ


 NHKを見ていたら、フランソワーズ・ジローさんの個展をやっているというじゃないですか。これはぜひ見たいと思って、茨城県の笠間まで行ってきました。常磐線の急行で一時間ちょっと。プチ旅行気分です。

 ジローさんの作品がこれほどまとまって展示されるのは日本では初めてじゃないでしょうか? 20歳でピカソと知り合ったときは、まだ画学生でした。それ以来、画家として生きてきて、その間、ピカソの子供を二人産み、ピカソにみずから別れを告げたあと、『ピカソとの生活』という回想記を執筆する。そして、ノーベル賞受賞者のジョナス・ソーク博士と再婚し、今年89歳ですが、いまも現役。なんてすばらしい生き方! 

 ジローさんの作品は、そこはかとないユーモアが特徴です。ぎごちなさや理屈っぽい生真面目さも目につきますが、根本的には明るくてストレートなところが魅力です。

 美術館の庭にはきれいな竹薮があり、タケノコの皮をまだ身にまとったまま、若竹が高く伸びていました。

 笠間といえば、稲荷神社が有名です。ついでにお参りしてきました。狐の像は古いものほど味がありますね。定番のお稲荷さんをお昼ご飯に食べて、なかなか楽しい日帰り旅行でした。

 余談ですが、稲荷神社では、いろんなおみくじを売っていましたが、なんと「血液型おみくじ」なんてものがありました。これはあんまりじゃないでしょうか。神様まで血液型なんていわないでほしいな。

(なかの ゆり)




七月便り


中埜有理(2010.7.4更新)

卓上観察――バラの館

 「こんにちは! 葉山にあるバラの館におよばれしてきたよ!」
(ブライスのクルたん、久々の登場です)

 お庭のバラがたくさん咲いたというので、梅雨の晴れ間の一日、お友達のうちで持ち寄りのお食事会。


 冷蔵庫の整理も兼ねて、私もお料理を3品もっていきました(黄色い魚のスタンプがついている)。ブルーチーズドレッシングのサラダ、鰯のブルスケッタ、牛肉と新じゃがと新タマネギの炒め物。

 そのほか、3人のお友達が、アメリカンチェリー、コールドミート盛り合わせ、コロッケとコールスローサラダ、胡麻風味の筑前煮、パン、チーズなど、豪華な食卓になりました。

 バラの館の主がシャンパンを用意しておいてくれたのですが、あわてもので、しかも壊し屋の私は、さっそく、きれいなシャンパングラスを床に落として割ってしまうという失態をしでかした! この次は、私だけ湯飲みでいいです。(泣)

 とはいえ、ものみなすべて、形あるもの、いつかは壊れる……(当人がいうなって話ですよね)。楽しかったです!

(なかの ゆり)






七月便り


中埜有理(2010.8.5更新)

卓上観察――宝石のようなもの


ブライスたちが食いつきそうに眺めているのは、さくらんぼの佐藤錦です。アメリカン・チェリーはお手ごろ価格ですが、日本産の佐藤錦はお高いですね! でも、アメリカン・チェリーよりずっとおいしい。

 本当にきれい。きちっと箱に詰めてあるから、よけい貴重品に見えます。まるで宝石のよう。もちろん、おいしくいただきました。さくらんぼ、だーいすき(……と、ブライスもいっています)

 
ジュエリーといえば……予定になかったのに(予算にもなかった)、つい衝動買いしてしまった。歪んだ真珠、バロックパールのネックレス。

自然界にはきれいなものがいっぱい(きれいなものを楽しむと、お財布は軽くなる)。

(なかの ゆり)






七月便り


中埜有理(2010.9.5更新)

マン・レイ展

国立新美術館でマン・レイ展を見てきました。 今回は、マン・レイの妻のジュリエットさん所蔵の新資料を含めた大規模な回顧展だそうです。

これまでもマン・レイ展は何度か開かれていますが、今回は、制作メモや写真技法の覚書など、これまで未公開のプライベートな資料が珍しい。小さな手書きのメモやスケッチなど、おしゃれなアートになっています。

もう一つの見どころは、マン・レイ撮影の短編映画が観られること。「ひとで」は前に観たことがあるけど、ほかの作品は初めて見ました。意味があるようで、ないようで、なかなか面白い。

展示会場を歩きつかれたあと、クーラーの効いた薄暗い部屋で、坐って観られるのは、ほっと一休みできる時間ではあるのですが、その一方で、睡魔にも襲われ……。

マン・レイはアメリカ人ですが、長くパリに暮らし、第二の故郷としていました。第二次世界大戦の勃発でパリを去り、ニューヨークで暮らしたあと、戦後になってふたたびパリに戻り、それから死ぬまで、パリのアトリエで妻のジュリエットと暮らしました。ジュリエットの案内で、アトリエのようすを紹介する短い映画もありました。

天上の高いアトリエのロフト部分を寝室にして、階下のアトリエには、マン・レイの雑多なオブジェがところ狭しと置かれています。高齢のジュリエットさんは、若い頃の美貌の名残をとどめています。夫に先立たれて一人暮らしが長かったようですが、いまは二人ともお墓に眠っています。寄り添うように並んだお墓には、それぞれの顔写真が貼ってあるんですよ。ちょっと変わっていますね。

展示には、マン・レイのパリ時代のファッション写真もあって、すごくすてきです。ハイファッションって、アートの一種のようですね。とても着られるものではないけど。

ミュージアムショップには、鈴木主税さんが翻訳したマン・レイの伝記も置いてありました。主税さんはおもに時事問題や政治経済についての本を翻訳していたけど、じつはアートや写真やクラシック音楽が大好きでした。もうすぐ一周忌です。

(なかの ゆり)






七月便り


中埜有理(2010.10.5更新)









卓上観察――秋のメニュー

 食欲の秋ですね。季節に関係なく、いまだかつて食欲減退というのを経験したことがない私です。 エッセイのねたがないので、例によって、食卓の写真でごまかそうと……。

 NHKの連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」は大ヒットでした。私も欠かさず見ていました。「ゲゲ女」にかぎらず、この30年くらい、だいたい見ています。次に始まった「てっぱん」で、主人公一家の朝ごはんの食卓に卵焼きが出ているのを見たら、急に出し巻き卵が食べたくなって、和風の朝ごはんを作ってみました。

 左側のが卵焼き。ちょっと焦げた。鯵の干物を焼いて(干物はだいたい冷凍庫に常備してある)、大根おろしを添えて(大根おろしは卵焼きにも)、発芽玄米入りのご飯、ワカメの味噌汁。卵を2個使ったのでコレステロール的にはまずいんだけど、記憶力を改善するレシチンは卵の黄身に入っているともいうじゃないですか。記憶力の減退に悩み、悪玉コレステロールが多めの人間は、はたして卵を食べるべきか、避けるべきか、それが問題だ。

 タコときゅうりの酢の物、茹でジャガイモのバターのせ、茄子と豚肉のしょうが焼き、炒めホウレンソウ添え、ご飯、汁物の変わりに寄せ鍋の残り。こんなシンプルな食事なのに、なぜ痩せない?

 朝ごはんは、うずまきパン、アイスココア、デザートの葡萄。簡単です。

 簡単といえば、寄せ鍋の土鍋に、残りご飯をぶちこんで細ネギを散らし、雑炊にして食べる。手抜きだけど、これがおいしい。味付けはぽん酢(というか、お酢とお醤油をかけるだけ←まさに手抜き)。

 どんどん手抜きになっていきますが、外出したついでに食べたアボカドバーガー。ふつうのハンバーガーと違うのは、熟れたアボカドがプラスされて、マヨネーズソースがたっぷり。これはカロリー高そう。

(なかの ゆり)






七月便り


中埜有理(2010.11.03更新)

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コートのイケメン観察――2010楽天オープン

 テニスの楽天オープンを観戦してきました。私のベストショット集――いや、写真撮影の腕がへぼで、ピンボケばかり、とてもベストとはいえないんですが、なるべくピントが合っていそうなのを選りに選って……カメラはCANNONのeosKISSX3、レンズは300mm。(写真はクリックで拡大)

1 フアン・マルティン・デルポトロ選手(アルゼンチン)。肘の手術後、長く休養していたあと、久しぶりの復帰です。一回戦で負けてしまいましたが、背が高く、手足が長く、プレイには迫力がありました。でも、童顔なんだよね。

2 ラデク・ステパネク選手(チェコ)。美人の女子テニス選手と結婚したばかりだそうで、「あの顔で意外にモテる」とか、「見かけによらず気配りがよい」とか、顔のことをいろいろいうのは失礼じゃないの? 力まかせのサービスゲームではなく、ネットプレイなどの見せ場が多い巧い試合。

3 男子テニス界きってのイケメンといわれるフェリシアーノ・ロペス選手(スペイン)。小説か映画に出てきそうなロマンティックな美貌のうえにテニスがこんなにうまいなんて……ただ、ちょっと笑顔が少なくて、とっつきにくい感じ? これで笑顔だったら、ファンが寄ってきてたまらないのかも。

4 同じくスペインのギジェルモ・ガルシア=ロペス選手。タイのバンコクで優勝したばかり。地味だけど、渋い! 

5 世界NO1のラファエル・ナダル選手。有名なルーティーンの1つで、パンツを引っ張るところを後ろから。ラファの写真は山ほど撮ったんだけど、ベストショットといえるのは少なかった。動きが速すぎて、カメラが捉えられないのかも。試合中は鬼のような集中力で顔も怖いのに、試合後には表情がぱっと緩む。強くてかっこいい選手が、とたんに1人のかわいい若者に! その落差がすごい。 

6 ラファに負けたロシアのディミトリ・トゥルスノフ選手。左足首の故障で3度も手術を受け、ランキングも400位台まで下がっていたのが、ようやく復活の兆し。もともとデヴィス・カップにロシア代表で出るくらい実力のある選手。ダブルスにもエントリーしていて(イタリアのセッピ選手と組んで)見事に準優勝しました。

7 そのトゥルスノフ選手。練習後に公園内の道路でばったり会ったので、写真を撮らせてもらった。感じのよい人でした。生で見る選手はみんな背が高くて、ラケットを小脇に抱えて、すごくカッコいい。

8 フランスのリシャール・ガスケ選手。多彩なテクニックの持ち主といわれているが、私はどうも胴長&がに股に見えるのが気になってしかたがない。

9 左・ダニエル・ヒメノ=トラベル選手(スペイン)と右・ヤルコ・ニーミネン選手(フィンランド)。二人ともブルーのウェアで爽やかでした。ニーミネンが勝ったのだけど、熱を出して翌日の試合は棄権。

10 決勝でナダルに負けたフランスのガエル・モンフィス選手。とてもお洒落でスマート。コートで何度もこけていたけど、大丈夫か。

11 日本でも人気の高いアンディ・ロディック選手(アメリカ)。生の試合を目の前で見て、その人気の高さが納得できた。とにかく目をひきつけられるプレイ。男っぽくて、ワイルドで、エキセントリックで、めちゃくちゃ魅力的。 

12 フランスのジョー=ウィルフリード・ツォンガ選手。豪快なようで、意外に繊細?

 あと、今回気づいたこと。写真を撮りながら試合を楽しむことはできない。試合を見るなら、カメラをもたない。写真を撮るなら、試合はあきらめる。コートサイドにいるプロのカメラマンたちは、試合の経過なんかまったく見ていないにちがいない。

(なかの ゆり)






七月便り


中埜有理(2010.12.03更新)

 以下の文章はATPワールドテニスのウェブサイトにあった記事の抜粋です。

   World No. 1 Rafael Nadal is keen to put the finishing touches on what has been an outstanding 2010 season by coming out on top at the Barclays ATP World Tour Finals in two weeks time.

   The Spaniard has been forced to withdraw from the BNP Paribas Masters this week due to tendinitis in his left shoulder, but during a visit to the Palais Omnisports in Paris on Monday, assured media and fans that his injury would not be a concern at the season finale in London.

(中略)

   The 24-year-old Nadal has enjoyed one of the best seasons in the Open Era, winning three major titles at Roland Garros (d. Soderling), Wimbledon (d. Berdych) and the US Open (d. Djokovic), where he became the youngest player to complete the career Grand Slam. He has also won three ATP World Tour Masters 1000 trophies and will finish as the year-end No. 1 in the South African Airways 2010 ATP Rankings.

   The left-hander was the first player to qualify for the elite eight-man field at the year-end championships, following his triumph at Roland Garros , and is keen to lay to rest the demons of last year's trip to London, when he arrived not at his physical peak following a succession of injuries and lost all three of his round-robin matches.

(中略)

   The Mallorcan will be joined at The O2 in London by Roger Federer , Novak Djokovic , Andy Murray and Robin Soderling , with six players in contention to clinch the remaining three spots in Paris this week.

 英語には、主語の言い換えがひんぱんにみられます。わかりやすくするために、ここでは言い換え部分をオレンジ色にしてみました。この記事はテニス選手のラファエル・ナダルのことを書いているのですが、ナダルを指すのに、最初は「世界ナンバー1のナダル」と形容しています。

 2段落目の冒頭では、ナダルという名前を省略して、「このスペイン人」となっています。日本語ではこういう表現はほとんどしません。3段落目では「24歳の」ナダルと書いています。4段落目では、the left-handerつまり「左利きの選手」と言い換えています。そして最後の段落では、出身地の「マヨルカ島」が出てきます。

 読者はこれらの言い換えによって、ナダルが世界NO1で、スペイン人で、24歳で、左手を使う選手で、マヨルカ島出身だという情報が伝わります。「The」がついているから、すべてナダルのことをいっている、ということがわかるんですね。でも、翻訳の初心者はたまに、The Spaniard をナダルのことだと思わずに、「スペイン人は……」とやっちゃったりします。誤訳ですね。「この」という言葉を入れていれば、まだいいんだけど、それでも翻訳調といわれてしまうかもしれない。

 言い換えが全部ナダルのことだとわかっていれば、どう訳してもいいのですが、「この24歳は」というような表現は日本語らしくないので、あまりお奨めできません。「24歳のナダルは」とか、「左利きのナダルは」とするやり方もありますが、形容の部分がとってつけたようで、不自然な感じはまぬがれません。

 では、どうすればよいか。それぞれ、場合に応じて工夫するしかありません。これは1つの案ですが、最初にナダルという名前が出たときに、(24歳、スペインのマヨルカ島出身)という説明を入れてしまうのもありだと思います。

 そんなわけで、ウェブサイトを読むのも英語の勉強……というのは、「このマヨルカ島出身の24歳」の追っかけで仕事が上の空になっていることの言い訳か?

(なかの ゆり)