【七月便り】バックナンバー 2018年  中埜有理(なかの ゆうり)   

2017年2016年2015年2014年2013年2012年2011年2010年









七月便り


中埜有理(2018.01.06更新)




 年末に家族(兄姉妹)が集まって会食をした。兄の家に集まって、料理は持ち寄り、ごちそうが並んだ。母が亡くなって求心力も減った感じではあるが、年に一度くらい集まるのもよいことだろう。兄姉妹、とくべつに仲がよいというわけではないが、おたがい干渉せず、でもとくに険悪ではない。これくらいあっさりした関係のほうがいいんじゃない?

 久しぶりに姉とゴッホ展を見にいった。姉とはむか〜しオランダとフランスへゴッホの記念展に一緒に行ったことがあり、ひさびさの姉妹デートだった。当時、子育てまっさい中だったが姉妹二人でゴッホ美術館とクレラー・ミュラー美術館を訪ね、オーヴェールのゴッホ終焉の地で墓参りもし、すごく楽しかったと姉もいっていた。帰りに姉の家へ遊びにいったので、ゴッホの絵のついた夕張メロンゼリーをお土産に。

 

 あいかわらず四季の森公園でウォーキングをしている。同じコースをぐるぐるまわることになるけど、まあいいや。冬の東京は晴天が多くていいですね。クリスマスイルミネーションの雪だるまはちょっと不気味だ。

 

 新春能を見にいくので、事前講座「能のてほどき」に出席。演目は「高砂」。いつもどおり能楽師の小島英明さんの解説で装束や面を見せてもらった。人外の存在をあらわす三角文様。金箔のお衣装など、美しい。謡もひとふし経験しました。声出ない。

 荻窪のイタリアンレストラン〈アルベロ〉が閉店するというので、お別れに行ってきた。おいしいし、コスパもよくてお気に入りだったのだが。写真はメインの鹿肉。



(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.02.03更新)




 オーストラリアはもともとイギリス連邦の傘下にあった。流刑地だったことでも知られている。そのため、イギリス文化の名残はいまもあちこちに見られる。

 今回宿泊したホテル・ウィンザーも歴史的な建築物で、市内を一巡する観光向けのトラム「シティ・サークル」でもこのホテルについての解説があるくらい、有名なスポットなのだった。セレブが宿泊したことでも知られ、イギリス王室御用達でもある。一階のバーは「クリケッターズ・バー」といい、クリケットのラケットが飾ってあったりする。クリケットはテニスよりも歴史が古いイギリス発祥のスポーツだ。

 

  建物はクラシックで雰囲気はあるのだが、床がぎしぎしと鳴ったり、風呂の排水に時間がかかったりと、近代的な便利さには欠ける。

 とはいえ、ここの食堂のアフタヌーンティーはガイドブックにも載るくらい有名で、試しに予約しようとしたら満席で、時間が選べず、じっさいに行ってみたらほんとに食堂がお客でいっぱいで驚いた。しかも、これがお安くない。ロンドンでも感じたけど、アフタヌーンティーって、ちょっとした食事以上にお高いもんなのね。

 

  カフェは朝からオープンしていて、朝食を食べにくる人でにぎわう。お勧めはスモークサーモン、アボカド、エッグベネディクトなど。朝だけオープンして、昼から夜まで閉めてしまう店もある。フレンチトーストやパンケーキも人気だった。オーソドックスなスクランブルエッグと焼きトマトにトースト。朝食がおいしいのもイギリス文化の影響かな。

 テニス全豪オープンの時期なので、街中のいたるところにパブリック・ビューイング用のスペースができている。これはコリンズ・スクエアにあった大型テレビとチェアのスペース。この時期のメルボルンはテニス一色でお客も多いけど、ほかの時期は大丈夫なのかなと心配になってしまうくらい。



(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.02.03更新)




 球春到来……「球春」っていつ? 諸説あるようですが、キャンプ開幕の2月から、本格的なシーズン開幕の4月くらいまでを指すようです。

 というわけで那覇滞在中にキャンプ見学に行きたいなと思っていたところ、どうも体調がすぐれず、遠出はやめて、歩いていけるセルラー球場へジャイアンツのキャンプを見にいってみました。

 野球、ぜんぜんファンじゃありません。いま誰がスターなのかも知らない。巨人は監督が高橋由伸ってことだけはかろうじて知っている。あとスター選手、阿部慎之助の名前も知っている。残念ながら、1軍はまだ来ていないので、2・3軍キャンプです。

 球場前には等身大のパネルがあって、ひとしきり眺めたあと、捕手の小林誠司選手をイケメンと認定、整理係のお姉さんに(パネルとの)ツーショット写真を撮ってもらった(笑)。 

 見学者用のパスを首にかけて、球場内に入り、ダッグアウトから、グラウンドの端にもうけられた見学用スペースに案内される。

 

 中央のケージ内では投手を相手にバッティング練習。端っこでは、コーチの球出しでバッティング練習をする若手。背番号が0から始まる三桁で、育成選手だとわかる。

 名前がわからなかったんだけど、目の前でピッチャーがコーチ相手に遠投練習をしていて、これは見ごたえがあった。ものすごい距離があるのにズバッとミットに収まる。私だったら半分の距離でも届かないわ。

 背番号27の捕手、宇佐美真吾がバッティング練習をしていて、カーンというきれいな球音にしびれた! はつらつと走りまわる若い肉体っていいですね(と、いささか年寄りじみた言になってしまった←ここで、じっさい年寄りだろうとツッコミが入るはず)

 キャンプ場である奥武山公園には緋寒桜が咲いていました。青空に濃いピンクの花がきれいでした。選手たちも沖縄各地のキャンプを楽しんでくれたらいいな。





(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.04.02更新)




「啓蟄」という言葉がある。冬のあいだ地中に潜っていた虫が春になってもぞもぞと出てくるという季節を指す。人間も春になると動き始めるようだ。3月にはお出かけのお誘いが多かった。

 ボストン美術館のコレクションから「パリジェンヌ展」を開催中の世田谷美術館へ出かけた。粋でおしゃれなパリジェンヌは昔から画題に取り上げられてきた。ファッションプレートの展示もあって、楽しい。レストランでランチも食べた。若いとはいえないうえにやや鬱っぽい姉妹のデートというシチュエーションはチェーホフの芝居にありそうだ。砧公園は梅が満開できれい。





  後日、こんどは逗子に住む友達のお誘いで、葉山にある神奈川県立美術館葉山館で開かれている「堀文子白寿展」へ。一色海岸を目の前に、抜群のロケーション。天皇家の御用邸も近い。一色海岸をパノラマ撮影してみた。



 

この99歳の日本画家は藤沢に在住で、いまは車いす生活ながら現役で絵を描いているという。すごいエネルギーだなと感服。抑制のきいた色彩と自然観察をもとにした確実な構成力が魅力。若いころに手がけた絵本の挿絵もかわいい。美術館そのものは広々とした空間が気持ちよかったが、逗子駅からバスというアクセスの悪さがちょっとね。






 売りだしたとたん即完売だった宝塚花組公演『ポーの一族』、ファンクラブの知り合いの知り合いという遠いつてを頼ってチケットを入手。ただし、買えるかどうかの結果は前日にならないとわからない! 久しぶりの宝塚。華やかで色気のある男役の群舞はかっこええわー。

 横浜美術館はテート・コレクションの作品を中心に構成された「NUDE展」。目玉はロダンの「接吻」。お正月に観た映画『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』に出てきた作品。もともとは地獄門の一部にするつもりだったが、テーマにそぐわないという理由で、独立した作品になったという。



 

 この作品だけ撮影可だったのだが、思った以上に大きくて、スケール感に圧倒された。やはりロダンの人体表現はすごい。怖くなるくらいだった。これは実物を見る価値がある。内覧会だったのでティーサービスもあり、ミルクティーとスコーンを出してくれた。テートはイギリスだけに紅茶がおいしい!





(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.05.04更新)




 先日、中・高校の学年会があった。もちろん来るのはみな同い年である。

 自分の至らないところを恥をしのんで告白するが、じつはごく親しい友人だけに常々そっと漏らしていることがある。「年寄りと田舎者はキライだ」ということ。友人にはたしなめられ、自分でもひどい言い分だとは思う。

 かといって、若者や子供が好きなわけではない。要するに、私は人間嫌いなのだろう。

 学年会には久しぶりに会う人もいた。高校生のころ、ひそかに学年でいちばんきれいだと思っていた人である。高校生のとき、私は学年の誰がいちばん魅力的かを比較検討し、トップ5を自分なりに認定していた。ちなみに、女子校である。私がひそかにトップ5と見なしていた彼女たちは美しく、頭もよく、スポーツもでき、友人が多く、とても魅力的だった。

 どんな大人になっているのかと期待半分、不安半分で出かけた。当然ながら、みんなおばさんになっていた。かつての美人という雰囲気すらなく、ごくふつうのおばさん。

 がっかりもせず、まあそうだろうなという感想。落ちこぼれだった私は、彼女たちとは別グループで、それほど親しかったわけではない。遠くから眺めていただけだった。

 とはいえ、トップをのぞいた他のクラスメイトたちこそ、まさに年齢相応になっていた。なんかの拍子に「私たち中高年が……」と口にしたら、いっせいに「中高年じゃない、老人だ!」と突っ込まれた。自分が嫌っている存在(老人)に自分がなる(避けがたい運命!)というのは不幸なので、なんとか老人を好きになりたいものです。

 で、自分はどうかといえば、改まったおしゃれをするのがいやで、ジーンズにブーツで出かけた。おまけに髪はピンク色……じつに若作りで、かえって老けがめだつ。肥えたともいわれ、一気に落ち込んだ。 



 

 落ち込むといえば、中高年性(老年性というべきか)鬱が悩みのたねである。ネットで「大人は子供みたいに誰かに機嫌をとってもらうのを待っていてはいけない。自分で自分の機嫌をとれるようにするべき」という言葉が広まっていた。

 たしかに毎日の憂鬱な気分を晴らすには日々の小さな工夫が大事だ。好きなものを見つけてファンになり(最近はフィギュアスケートの宇野昌磨くんが私のお気に入り)、スケートのショーを観に横浜へ行ったついでにシウマイ弁当を買って帰り、4月の桜や5月の新緑を愛で、いろどりのよいサラダを作って食べる。ロランギャロス(テニス全仏オープン)のサポーターになったら、そのお礼にロゴ入りのタオルを贈ってきてくれた。こういう小さなことがうれしい。BLコミックスだって気晴らしのために読んでいるのさ。

 でも、気晴らしするのにもお金がいるよね。ひとりで生きる女性は経済力をもたなきゃね。というか、誰でもひとりになる可能性があるんだから、自分の機嫌をとるためくらいのお金は稼ぎたいものです。





 そうやって一生懸命、自分を鼓舞しているのに、テレビや新聞で安倍政治の醜悪さを見せつけられると、とたんに落ち込む。安倍政治、罪が深い。だからといって石破や小泉になってもさらに最悪なのでなんとか頼むよ。経済、外交、内政、社会保障、子育て、男女平等……ぜんぶ落第じゃないか、安倍政治。



(なかの ゆうり)