【七月便り】バックナンバー 2018年  中埜有理(なかの ゆうり)   

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七月便り


中埜有理(2018.01.06更新)




 年末に家族(兄姉妹)が集まって会食をした。兄の家に集まって、料理は持ち寄り、ごちそうが並んだ。母が亡くなって求心力も減った感じではあるが、年に一度くらい集まるのもよいことだろう。兄姉妹、とくべつに仲がよいというわけではないが、おたがい干渉せず、でもとくに険悪ではない。これくらいあっさりした関係のほうがいいんじゃない?

 久しぶりに姉とゴッホ展を見にいった。姉とはむか〜しオランダとフランスへゴッホの記念展に一緒に行ったことがあり、ひさびさの姉妹デートだった。当時、子育てまっさい中だったが姉妹二人でゴッホ美術館とクレラー・ミュラー美術館を訪ね、オーヴェールのゴッホ終焉の地で墓参りもし、すごく楽しかったと姉もいっていた。帰りに姉の家へ遊びにいったので、ゴッホの絵のついた夕張メロンゼリーをお土産に。

 

 あいかわらず四季の森公園でウォーキングをしている。同じコースをぐるぐるまわることになるけど、まあいいや。冬の東京は晴天が多くていいですね。クリスマスイルミネーションの雪だるまはちょっと不気味だ。

 

 新春能を見にいくので、事前講座「能のてほどき」に出席。演目は「高砂」。いつもどおり能楽師の小島英明さんの解説で装束や面を見せてもらった。人外の存在をあらわす三角文様。金箔のお衣装など、美しい。謡もひとふし経験しました。声出ない。

 荻窪のイタリアンレストラン〈アルベロ〉が閉店するというので、お別れに行ってきた。おいしいし、コスパもよくてお気に入りだったのだが。写真はメインの鹿肉。



(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.02.03更新)




 オーストラリアはもともとイギリス連邦の傘下にあった。流刑地だったことでも知られている。そのため、イギリス文化の名残はいまもあちこちに見られる。

 今回宿泊したホテル・ウィンザーも歴史的な建築物で、市内を一巡する観光向けのトラム「シティ・サークル」でもこのホテルについての解説があるくらい、有名なスポットなのだった。セレブが宿泊したことでも知られ、イギリス王室御用達でもある。一階のバーは「クリケッターズ・バー」といい、クリケットのラケットが飾ってあったりする。クリケットはテニスよりも歴史が古いイギリス発祥のスポーツだ。

 

  建物はクラシックで雰囲気はあるのだが、床がぎしぎしと鳴ったり、風呂の排水に時間がかかったりと、近代的な便利さには欠ける。

 とはいえ、ここの食堂のアフタヌーンティーはガイドブックにも載るくらい有名で、試しに予約しようとしたら満席で、時間が選べず、じっさいに行ってみたらほんとに食堂がお客でいっぱいで驚いた。しかも、これがお安くない。ロンドンでも感じたけど、アフタヌーンティーって、ちょっとした食事以上にお高いもんなのね。

 

  カフェは朝からオープンしていて、朝食を食べにくる人でにぎわう。お勧めはスモークサーモン、アボカド、エッグベネディクトなど。朝だけオープンして、昼から夜まで閉めてしまう店もある。フレンチトーストやパンケーキも人気だった。オーソドックスなスクランブルエッグと焼きトマトにトースト。朝食がおいしいのもイギリス文化の影響かな。

 テニス全豪オープンの時期なので、街中のいたるところにパブリック・ビューイング用のスペースができている。これはコリンズ・スクエアにあった大型テレビとチェアのスペース。この時期のメルボルンはテニス一色でお客も多いけど、ほかの時期は大丈夫なのかなと心配になってしまうくらい。



(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.02.03更新)




 球春到来……「球春」っていつ? 諸説あるようですが、キャンプ開幕の2月から、本格的なシーズン開幕の4月くらいまでを指すようです。

 というわけで那覇滞在中にキャンプ見学に行きたいなと思っていたところ、どうも体調がすぐれず、遠出はやめて、歩いていけるセルラー球場へジャイアンツのキャンプを見にいってみました。

 野球、ぜんぜんファンじゃありません。いま誰がスターなのかも知らない。巨人は監督が高橋由伸ってことだけはかろうじて知っている。あとスター選手、阿部慎之助の名前も知っている。残念ながら、1軍はまだ来ていないので、2・3軍キャンプです。

 球場前には等身大のパネルがあって、ひとしきり眺めたあと、捕手の小林誠司選手をイケメンと認定、整理係のお姉さんに(パネルとの)ツーショット写真を撮ってもらった(笑)。 

 見学者用のパスを首にかけて、球場内に入り、ダッグアウトから、グラウンドの端にもうけられた見学用スペースに案内される。

 

 中央のケージ内では投手を相手にバッティング練習。端っこでは、コーチの球出しでバッティング練習をする若手。背番号が0から始まる三桁で、育成選手だとわかる。

 名前がわからなかったんだけど、目の前でピッチャーがコーチ相手に遠投練習をしていて、これは見ごたえがあった。ものすごい距離があるのにズバッとミットに収まる。私だったら半分の距離でも届かないわ。

 背番号27の捕手、宇佐美真吾がバッティング練習をしていて、カーンというきれいな球音にしびれた! はつらつと走りまわる若い肉体っていいですね(と、いささか年寄りじみた言になってしまった←ここで、じっさい年寄りだろうとツッコミが入るはず)

 キャンプ場である奥武山公園には緋寒桜が咲いていました。青空に濃いピンクの花がきれいでした。選手たちも沖縄各地のキャンプを楽しんでくれたらいいな。





(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.04.02更新)




「啓蟄」という言葉がある。冬のあいだ地中に潜っていた虫が春になってもぞもぞと出てくるという季節を指す。人間も春になると動き始めるようだ。3月にはお出かけのお誘いが多かった。

 ボストン美術館のコレクションから「パリジェンヌ展」を開催中の世田谷美術館へ出かけた。粋でおしゃれなパリジェンヌは昔から画題に取り上げられてきた。ファッションプレートの展示もあって、楽しい。レストランでランチも食べた。若いとはいえないうえにやや鬱っぽい姉妹のデートというシチュエーションはチェーホフの芝居にありそうだ。砧公園は梅が満開できれい。





  後日、こんどは逗子に住む友達のお誘いで、葉山にある神奈川県立美術館葉山館で開かれている「堀文子白寿展」へ。一色海岸を目の前に、抜群のロケーション。天皇家の御用邸も近い。一色海岸をパノラマ撮影してみた。



 

この99歳の日本画家は藤沢に在住で、いまは車いす生活ながら現役で絵を描いているという。すごいエネルギーだなと感服。抑制のきいた色彩と自然観察をもとにした確実な構成力が魅力。若いころに手がけた絵本の挿絵もかわいい。美術館そのものは広々とした空間が気持ちよかったが、逗子駅からバスというアクセスの悪さがちょっとね。






 売りだしたとたん即完売だった宝塚花組公演『ポーの一族』、ファンクラブの知り合いの知り合いという遠いつてを頼ってチケットを入手。ただし、買えるかどうかの結果は前日にならないとわからない! 久しぶりの宝塚。華やかで色気のある男役の群舞はかっこええわー。

 横浜美術館はテート・コレクションの作品を中心に構成された「NUDE展」。目玉はロダンの「接吻」。お正月に観た映画『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』に出てきた作品。もともとは地獄門の一部にするつもりだったが、テーマにそぐわないという理由で、独立した作品になったという。



 

 この作品だけ撮影可だったのだが、思った以上に大きくて、スケール感に圧倒された。やはりロダンの人体表現はすごい。怖くなるくらいだった。これは実物を見る価値がある。内覧会だったのでティーサービスもあり、ミルクティーとスコーンを出してくれた。テートはイギリスだけに紅茶がおいしい!





(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.05.04更新)




 先日、中・高校の学年会があった。もちろん来るのはみな同い年である。

 自分の至らないところを恥をしのんで告白するが、じつはごく親しい友人だけに常々そっと漏らしていることがある。「年寄りと田舎者はキライだ」ということ。友人にはたしなめられ、自分でもひどい言い分だとは思う。

 かといって、若者や子供が好きなわけではない。要するに、私は人間嫌いなのだろう。

 学年会には久しぶりに会う人もいた。高校生のころ、ひそかに学年でいちばんきれいだと思っていた人である。高校生のとき、私は学年の誰がいちばん魅力的かを比較検討し、トップ5を自分なりに認定していた。ちなみに、女子校である。私がひそかにトップ5と見なしていた彼女たちは美しく、頭もよく、スポーツもでき、友人が多く、とても魅力的だった。

 どんな大人になっているのかと期待半分、不安半分で出かけた。当然ながら、みんなおばさんになっていた。かつての美人という雰囲気すらなく、ごくふつうのおばさん。

 がっかりもせず、まあそうだろうなという感想。落ちこぼれだった私は、彼女たちとは別グループで、それほど親しかったわけではない。遠くから眺めていただけだった。

 とはいえ、トップをのぞいた他のクラスメイトたちこそ、まさに年齢相応になっていた。なんかの拍子に「私たち中高年が……」と口にしたら、いっせいに「中高年じゃない、老人だ!」と突っ込まれた。自分が嫌っている存在(老人)に自分がなる(避けがたい運命!)というのは不幸なので、なんとか老人を好きになりたいものです。

 で、自分はどうかといえば、改まったおしゃれをするのがいやで、ジーンズにブーツで出かけた。おまけに髪はピンク色……じつに若作りで、かえって老けがめだつ。肥えたともいわれ、一気に落ち込んだ。 



 

 落ち込むといえば、中高年性(老年性というべきか)鬱が悩みのたねである。ネットで「大人は子供みたいに誰かに機嫌をとってもらうのを待っていてはいけない。自分で自分の機嫌をとれるようにするべき」という言葉が広まっていた。

 たしかに毎日の憂鬱な気分を晴らすには日々の小さな工夫が大事だ。好きなものを見つけてファンになり(最近はフィギュアスケートの宇野昌磨くんが私のお気に入り)、スケートのショーを観に横浜へ行ったついでにシウマイ弁当を買って帰り、4月の桜や5月の新緑を愛で、いろどりのよいサラダを作って食べる。ロランギャロス(テニス全仏オープン)のサポーターになったら、そのお礼にロゴ入りのタオルを贈ってきてくれた。こういう小さなことがうれしい。BLコミックスだって気晴らしのために読んでいるのさ。

 でも、気晴らしするのにもお金がいるよね。ひとりで生きる女性は経済力をもたなきゃね。というか、誰でもひとりになる可能性があるんだから、自分の機嫌をとるためくらいのお金は稼ぎたいものです。





 そうやって一生懸命、自分を鼓舞しているのに、テレビや新聞で安倍政治の醜悪さを見せつけられると、とたんに落ち込む。安倍政治、罪が深い。だからといって石破や小泉になってもさらに最悪なのでなんとか頼むよ。経済、外交、内政、社会保障、子育て、男女平等……ぜんぶ落第じゃないか、安倍政治。



(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.06.09更新)




 全仏オープンを観にパリへ行ってきました。パリで食べたもの。

 雨に降られて、目の前にあったレバノン料理の店に駆けこんだ。メゼ7種。ちょっとスパイシーすぎた。

 ホテルのすぐそばにあるバー/ブラッスリ〈41〉(フォーティワン)。

 チーズハンバーガーを食べた。チーズがモツァレッラというところがおフランスならでは。

 



 翌日は、大手スーパーマーケットのカルフールで寿司を買ってホテルの部屋食。ゆで卵のサラダとカットフルーツ。

 いちばん上の赤茶色がロランギャロスを指す。下の白い標識はメトロのポルトドートゥイウユを示している。

 全仏ロランギャロスのラウンジで出る軽食はとてもおしゃれ。おしゃれすぎて、見ただけでは味が想像できない。食べてみて初めて好き嫌いがわかる。油断しているとパクチー味だったりして(私はパクチーが苦手)。飲み放題のシャンパンはモエ・エ・シャンドン。奥にあるのは毎日出る無料の新聞『ル・コティディアン』



 これもホテルに近いブラッスリー。鏡の上に白い文字で書かれた「今日のメニュー」がいかにもフランス的な雰囲気。

 その店〈ボージョレ・ドートゥイユ〉で食べたのは、seabassのラタトゥイユ添え、seabassとはスズキのことらしい。身のやわらかな白身魚だった。

 デザートはタルトタタンを2人でシェア。添えられていたのは生クリームではなく、クロッテッドクリーム。

 

 テニス選手がよく行くというイタリアン・レストランへ。シャンゼリゼに近く、メトロのフランクラン・ルーズベルト駅のそば。

 ピザ・マルガリータとグリーンサラダ。海の幸のスパゲッティも食べたのだが(トマトソースがとてもおいしかった)食欲に負けて写真を撮り忘れた。

 デザートはアフォガード。めっちゃ大きくて、生クリームがたっぷり。となりのテーブルには、女子テニス世界ナンバーワンのシモーナ・ハレプがチームといっしょに来ていた。

 

 欧州在住のテニス友達とも合流して総勢6人で会食。ホテルとロランギャロス会場のあいだにあるレストラン〈murat〉で。これまでの2軒よりはちょっと高級。テーブルクロスがちゃんとした布製。

 生ハムとメロン。1人遅れてきたため、この時点は5人だったので、ちゃんと人数分、5切れある。

 春巻きも5本。

 

 フランスといえば、欠かせないのがフレンチフライ。サイドディッシュで注文。

 この日は別のスーパーでサンドイッチ(ツナ)とシーザーサラダを買ってきて部屋食。オニオンスープは日本から持参したもの。オレンジとリンゴはホテルからのサービス。シーザーサラダはドレッシングもフォークもついていて便利。仕切りのあるプラスチック容器にグリーンとゆで卵とチキンと固焼きパンが別々に入っている。ドレッシングはチューブ入り。

 ホテルの朝食。ほとんど毎日同じメニューで食べていた。グレープフルーツジュース、バゲット、クロワッサン、バター、ハムとチーズ、ゆで卵(ない日もあった)、フルーツ・コンポートとヨーグルト、コーヒー。ただのバゲットにバターを塗って食べるのがとてもおいしい。



(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.07.01更新)










NHKの朝ドラ「半分、青い」は漫画家が主人公です。作品が描けなくなり、仕事を辞めて結婚するという仲間が「スケジュール帳が真っ白」なのがつらいという。デートや遊びの余裕がない生活がいやだというのですね。それにたいして、主人公は「真っ白だとうれしい、一日中マンガを描いていられる」と答えていました。

 私もこの主人公に同感です。一日家にいられるのがすごくうれしい。まあ、一日中仕事をしているわけではないけど。

 高齢者の暮らしで「きょうよう」と「きょういく」が大事だとよくいわれます。「今日、用がある」「今日、行くところがある」ということらしい。

 まだ現役で仕事をしているから、「家にいたい」と思うのかもしれない。自分の家であることも大事。これが親の家だったら、家にいたいなんて思わないでしょうね。

 とはいえ、そういう引きこもり体質だからこそ、なにかのお誘いがあったら、スケジュールが許すかぎり断わらないというのがマイ・ルール。出かけるのも好きなのです。

 母の三回忌で久しぶりに兄弟姉妹が集まった。法事、墓参りのあと、いつもの中華料理屋で精進落としの会食。前期高齢者の集団になりかかっている一族のなかで、お孫ちゃんの存在が場をなごませてくれます。

 表参道のフレンチ・レストラン〈ランス・ヤナギダテ〉で、テニス観戦好きの友人とランチ。全仏のプレイヤーズ・タオルを現地購入して持ちかえったお礼ということで、ごちそうしていただきました。カニ肉のゼリー寄せとか鴨のコンフィ、とてもおいしい。エビで鯛を釣るという感じがなきにしもあらず。

 テニス・ファン3人でテニス界の今後を検討したところ、結論は――  
サーシャはもっとダンベルワークを!(筋肉増量)  
ジョコはこれ以上戻らない(モチベーションの欠如か、ちょっとショック!)  
ニシコリは「とりあえず」応援すべし(日本人だろ)
 
――ということになりました。

(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.08.02更新)




 西のほうに住んでいる友達が農場を経営していて、夏野菜の詰め合わせ(中身はおまかせ)を購入した。大地からこれだけの収穫を得るってすごい。緑色の親指をもっていない私には尊敬のひとこと。野菜の色が美しい! 私の好きなコミックスに『美しい野菜』というタイトルがあるけど、ほんとうにそのとおり。

 「ミニトマトの宝石箱や〜!」食レポか! 

 材料があるからには料理をせねばなるまい。ということで、左上がズッキーニのチーズ焼き、その下がラタトゥイユ、ミニトマトはなまで味の違いを見る。トマトは味が濃くて瑞々しく、どれもおいしかった。

 

 野菜といえば、このキノコ、なんだかわかりますか? 答えはポルチーニ。乾燥したのしか見たことがなかったので、中目黒のイタリアン・レストランで生のポルチーニを見せてもらってびっくり。こんなんなのね。香りもいい。このあいだ行ったパリでも乾燥ポルチーニを買ってきた。大手スーパーのカルフールで、野菜売り場のお兄さんに「ポルチーニ」といっても通じず、「セペ?」とか「マッシュルームの仲間」とか(笑)四苦八苦していたら、やっと見つけてくれた。

 アート界随一のナチュラリスト(?)モネの展覧会を見てきた。モネ作品だけではなく、モネに触発された日本人アーティストの作品がたくさん展示されていて、意欲的な企画だった。

 iphoneのカメラって、なにかの拍子にボタンをおしちゃうことあるよね。石畳と自分のサンダルの足、まちがえたにしてはよく撮れていた。

 

 フィギュアスケート選手の宇野昌磨くん。新横浜へスケートのショーを見に行ったとき、オリンピック銀メダルおめでとうのファンレターを置いてきた。差出人の名前がないのは失礼かも、と思って住所を書いておいたら、なんと、サイン入り写真が送られてきた。写真のプリントはご家族の手作りで、発送も家族総出でしてくれたそうだ。おつかれさま&ありがとう。

 ちょうど届いた翌日、大阪までザ・アイスを見に行くことになっていた。台風12号接近中で、行こうかどうしようかと悩んだけど、「私は運がいい」という信念のもと、見切り発車。新幹線は通常どおり、なんの支障もなく新大阪に到着。雨も降っていない。昼・夜と2公演見て、昌磨の今期フリーとショートの両方を見られて大満足。帰りの新幹線が浜松あたりで運行停止、でも15分くらいで再開されて、日付は越えたもののなんとか無事帰着。日帰りで大阪へ行ったのは、去年のテニスデ杯以来だった。弾丸は疲れるよ!



(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.09.07更新)




 ニューヨークへ行ってきました。ざっと四半世紀ぶりくらいです。JFK空港からマンハッタンへ向かっているとき、ちょうど日没でした。わくわくします。
 ホテルはちょっと贅沢をして、ミッドタウンのグランドハイアットにしました。グランドセントラル駅のすぐ隣にあって便利です。ホテルの前でタクシーから降りたとたん、NY在住の友人とばったり遭遇したのは驚き。いっしょに夕食をとろうということになり、チェックインをすませ、その後、ホテルのレストランでニューヨーク・スタイルのピザを分けて食べる。皮は薄めでおいしかった。
 翌朝もホテルのレストランで朝食をとりました。玉子2個のスクランブルにクリスピーべーコンを追加、トーストの種類(白パンかライ麦パン)を指定し、フルーツかポテトのどちらかを選べるのでフルーツにしました。オレンジジュースは必ずついて、コーヒーはお代わり自由です。42丁目を見下ろす二階のカフェで。

 

  〈ディーン&デルーカ〉のロブスターロール(写真手前)。『キッチンコンフィデンシャル』の翻訳をしていたときは、ロブスターロールがどんなものだか知らなかったので、実物を食べることができて感無量。
 ニューヨークといえばクリームチーズとサーモンをはさんだベーグルは外せません。ベーグルの店〈Zucker's〉がホテルのそばにあったので朝食をとりに行きました。ここでもベーグルの種類やはさむ具をいちいち選ばなければいけない。コーヒーもシュガーやルクの要不要からカップの大きさまで言わなければならず、英語が苦手だとハードル高いです。
 グランドセントラル駅のマーケットにお寿司屋さんがあったので、スパイシーツナ、マグロとサーモンの握り、アボカドロールのセットを買ってきて、ホテルの部屋で食べました。インスタント味噌汁もある。量り売りのポテトサラダを添えて。スパイシーツナはピリ辛ソースがかかっています。

 

 クロワッサンにザクロの実入りのヨーグルト、カフェラテ。ザクロの実がすっぱくておいしい。オーガニックのカフェや食材店が増えていました。
 やはりマーケットで調達してきたエビのタコス、お米のサラダ、蒸しチキンにハイネケンビールで夕食。
 アメリカといえばハンバーガーを食べねば。ということで、チーズバーガー。



 グランドセントラルにあるハンバーガーショップ〈シェイクシャック〉のハンバーガーはパテがとてもジューシー。
 アメリカといえば、ドーナツも欠かせません。〈ドーナツ・プラント〉のピーナツバナナクリーム、大きくて四角い。
 ずっとジャンクフードばかりでしたが、ようやく友達と合流して、ギリシャ料理店でちゃんとした食事ができました。ワインといっしょにギリシャ風の前菜(ヒヨコマメのペースト、ピクルス、オリーブなど)、写真はギリシャ風サラダ(フェタチーズが美味)、



 ポルトガル風イワシの塩焼き、ラムチョップ(焼き野菜添え)など。
 最後の日は、締めくくりに老舗〈ベンジャミン・ステーキハウス〉へ。私の好きなのはフィレミニョン、焼き方はミディアムレアで。どっしりと噛み応えがあってうまい! サイドディッシュはサワークリーム添えのベイクトポテト、グリーンサラダ。ミニトマトにフォークを刺そうとしたら、滑って床にすっ飛ばすという失敗。
 ニューヨークって、美味しいものが食べられるし、エンターテイメントの種類も豊富だし、超高層ビルはかっこいいし、買いたいものもいっぱいで楽しめそう……ただし、お金があれば、の話ですね。



(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.10.03更新)




 先月のニューヨークにつづき、またイサムノグチ展です。今度は初台のオペラシティにある画廊。夕方から行ったので、オペラシティの建物そのものがなんだかシュールです。  

 山手通りを渡る歩道橋。その途中で見上げた高層ビル。黄昏の秋の空が美しい。

 ホールの真ん中に人が立っていてびっくり。イギリスのアーチスト、アントニー・ゴームリーの作品です。

 

 東京オペラシティのアートギャラリー、初めて行きました。こんな立派なギャラリーがあったのね。

 ニューヨークのクイーンズにあったノグチ美術館は倉庫のような感じで、庭もあり、扉も開かれていて、窓も大きく、風通しがいい感じだったのですが、こちらは対照的に窓がなく、完全な閉鎖空間。どちらかといえば、ノグチの作品は広々とした空間のほうが似合います。

 ただ、中国滞在時に描いた墨によるデッサンは閉鎖的な空間によくマッチしていて、官能性がきわだっていました。

 この展覧会でも、いくつかの作品は撮影可になっていて、今回アップした写真はすべてそれらです。デッサンは撮影不可でした。

 アカリ・シリーズは灯が入っていて、ユーモラスな形体が心なごませます。ファンタスティックです。こんな照明器具だけ集めた部屋があったら楽しいでしょうね。マンション住まいじゃ無理だけど。リスをかたどった作品とか、ノグチは意外に可愛いものが好きだったのでしょうか。

 



 大きな石の作品ももちろん魅力的。ニューヨークで見たときにエロいなと感じた石の肌理は東京で見るとそうでもない。どういう心理的動きなのかな。

 ショップではカタログが売り切れていました。人気なのね。岡本太郎とノグチの2人展もあるようだし、藤田嗣治の大回顧展もやっているし、もしかしたら越境のアーチストが流行なのでしょうか?

(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.11.04更新)




 秋ですね。紅葉狩りに日光へ行ってきました。友人が車を出してくれて、運転も引き受けてくれた。よき友がいて幸せ。

 東北道から日光自動車道、山がほどよく紅葉している。山肌を彩る赤や黄色の落葉樹はかすかな凹凸、薄い立体感があって、まさに「錦繍(きんしゅう)」という形容がふさわしい。

 いろは坂に入る前に、霧降(きりふり)の滝に立ち寄った。久しぶりに見る滝。動きのある水の流れは目に快く、たぶんマイナスイオンのせいか、リラックスできる(スパセーボ効果=気のせいかもしれないが)

 

 いろは坂の途中、明智平に立ち寄る。いろは坂の渋滞は有名なので、平日とはいえ覚悟していたのだが、午後だったので、帰途につく下り坂はかなり詰まっていたが、登りは停滞なくすいすい進んだ。唯一、明智平に入る手前だけ少し待たされた。

 車から降りるとかなり寒い。風もあって、防寒具が必要なくらい。標識の根元、ずんぐりと丸い石碑には幸田文の『崩れ』からの一節が刻まれていた。展望台までロープウェイで3分。展望台からは、はるかに中禅寺湖、そこから流れ落ちる華厳の滝が見える。外国人観光客も大勢いた。

 さらに奥日光に向かい、湯ノ湖畔に出る。龍頭の滝は2本の滝からなる。規模としては小さいが、滝壺が近いので、水音やしぶきに迫力がある。

 

 奥日光の湯本温泉へ向かい、湖畔からやや離れたホテルに到着。部屋に露店風呂がついている。お湯は熱く、空気はひんやり、気持ちいい!

 大浴場は、それほど広くないが、クラシックな雰囲気の石造りで、いい感じ。お客さんがいないときに、iphoneでパチリ。お湯は硫黄の香りが強く、うっすらと白濁していて、いかにも温泉という感じ。すごくよかった。

 ホテルの中庭にある足湯。ラウンジから出られる。昨夜は初雪だったらしく、ベンチにうっすらと雪が積もっていた。

 

 ラウンジでは薪ストーブに火が入っていた。昨今、都会では焚火も禁止されているので、燃える火を見るのは久しぶり。

 日光名物の湯葉と焼き葱が具のお吸い物。栃木牛のステーキがメインの夕食はとても美味でした。食べるのに夢中でメインの写真を撮り忘れるというお約束のような展開。

 行きの東北道羽生サービスエリアで昼食に食べたラーメン。この羽生SAには帰り道でも立ち寄ることになった(ただし上り線)。

 

 湯ノ湖畔にある金谷ホテル付属のカフェ・ユーコンでお茶。三種のミニロールケーキ盛り合わせ。ベリーのソースがおいしい。外のテラス席は湖がすぐそばに見えて気持ちがいいけど、寒いのでブラケットが常備してあった。

 晴れ渡った空のもと、湖面が輝いている湯ノ湖。湖畔には真っ赤に紅葉した楓やナナカマドがあってきれいだった。

 秋らしい青空のもと、紅葉と白樺の白が映える。雄大な山の姿を見ると気分が晴れる。

 

 日光江戸村! にゃんまげのふるさと。大忍者屋敷で、忍者ショーを観た。入場を待つあいだ、入場整理係の忍者が真四角の薄い紙を配っている。折り紙かな? 何を折るのかな? あ、きっと手裏剣だ! と想像をたくましくしたのに、予想は外れた。答えは「おひねり」。お金を包んで舞台に投げてください、とのこと。外国人のお客さんも多かったので、「フォト、ビデオ、オーケー、バット、ノーフラッシュ、OK? チップ(紙をひねる動作)、スロウ(投げる動作)・トゥー・ザ・ステージ・プリーズ」と。最近の忍者は英語もしゃべれないとまずいらしい。

 忍者ショーのあと食べたのは、江戸風のかき揚げそば。かき揚げが丸くて大きい! 

 帰りの東北道、羽生サービスエリアに立ち寄ったのは、池波正太郎の「食」をテーマにした江戸の町並み風フードコートがあるから。行きの羽生SAで、急きょgoogle検索して発見しただだけなんだけどね。おなかがすいていたら、いろいろ食べられたんだろうけど、帰宅後の夕飯用に鰻弁当を買っただけ。思いがけず、時代小説風の江戸趣味を楽しんだ日光旅行でした。

(なかの ゆうり)








七月便り


中埜有理(2018.12.02更新)




 師走ともなると、町に異形の者たちが姿をあらわす……って、師走、関係ないか。仕事が一段落したので、よく聞くけどじつは行ったことがない都内の美術館めぐりをしました。文京区の弥生美術館、南青山の根津美術館、岡本太郎記念館、汐留ミュージアムなど。根津美術館の庭園は紅葉が見事だった。茶室の入口にひっそりと、しかし存在感たっぷりにたたずむ石の像。只者ではない雰囲気をただよわせる。

 岡本太郎の旧居を用いた美術館。庭にはこんな顔のオブジェ。異形そのもの。

 ぐにゃぐにゃした触手をもった彫像に不思議な顔、顔、顔。

 

 しかし、作品もさておき、なにより異形の者というべきは、彼自身ではないだろうか。写真からも熱さが伝わってくる。1階のアトリエには太郎氏をかたどったマネキン人形まであった。「ジャズ」がテーマの展示で、シャンソンの「枯葉」をうたう画家の声がスピーカーで流れていた。

 マネキンといえば、映画館のロビーでフレディ・マーキュリーと遭遇。見た目が逸脱していると世間に受け入れられないという実例のようなフレディ。でも、セルフプロデュースに長けたフレディはそれを逆手にとって、何万人ものファンから愛されることになった。映画を見ながらほんとに泣いている人がいて驚いた。

 恨みをもって死んだ人間が異形の者となって転生し、恨みを晴らそうとするのは『魔界転生』。溝畑淳平演じる天草四郎はワイヤーアクションで宙を飛び、美しい容姿がぴったりでした。この旗は猪塚健太さんが演じた荒木又右衛門。転生した亡者どものなかでも、とびきりの異形っぷり。

 

 師走になると出現するクリスマス関連の不思議な者たち。銀座の街角でサンタ帽をかぶり、壁に身を寄せる黒い天使。なんだかわけがわからない。

 異形感(?)あふれるイルミネーション。「地蔵か?」と思わせる雪だるまたちがうずくまっている。やや不気味。

 きれいといえばきれいだけどね。



(なかの ゆうり)